画像:時事通信フォト
スタジオジブリが手掛けたアニメーション映画「コクリコ坂から」が、21日夜9時から「金曜ロードショー」(日本テレビ系列)で放送されます。
2011年に上映された同映画、しかしこの作品の主人公である女学生、松崎海にモチーフとなった人物がいるという噂があることをご存知でしょうか。
そのモチーフの人物に、今回迫りました。
「コクリコ坂から」モチーフになったのはあの大御所女優?噂の真相は?
2011年に公開、宮崎五朗さんが第2作目として手掛けたアニメーション映画「コクリコ坂から」が、今夜9時から「金曜ロードショー」で放送されます。
当時、東日本大震災の爪痕が生々しく残る状況下での公開でしたが、2011年の興行収入邦画で1位、日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞を受賞するなど華々しい功績を収めました。
しかし、この話題となった作品の主人公・松崎海にはモチーフとなった人物がいるという噂が。
私がその噂の存在を知ったのは、前回「金曜ロードショー」で「コクリコ坂から」が放送された2016年でした。
海ちゃんを描くにあたって宮崎吾朗監督がイメージしたのは“若い頃の吉永小百合さん”なんだそうです。吉永さんが海ぐらいの年齢だった時は、庶民派で隣にこんな女の子がいたらいいな、と思うような元気な女の子を演じていたとのこと。#コクリコ坂 pic.twitter.com/wrRuhqrpWA
— アンク@金曜ロードSHOW!公式 (@kinro_ntv) August 12, 2016
松崎海のモチーフとなった人物、それは日本を代表する女優・吉永小百合さん。
ただ「金曜ロードショー」の公式SNSでの投稿を目にした時、ある疑問が。
「吉永小百合と松崎海、2人の類似点はどこにあるのか」
吉永さんは女優として現在も活動を続けていますが、1989年を最後にテレビドラマから遠ざかっており易々とテレビではお目にかかれない存在。
平成生まれの私には「吉永小百合」という女優は庶民的な存在ではなく、映画にしか出てこない「大人な女性」とのイメージがありました。
一方「コクリコ坂から」の松崎海は、庶民的な雰囲気に加えて女学生らしい「あどけなさ」と「ハツラツさ」を感じ、その「差」に違和感を覚えていたのです。
では、一体どこで吉永さんと、松崎海というキャラクターがリンクするのか。
今回、「コクリコ坂から」を手掛けたスタジオジブリに問い合わせてみると、
「『コクリコ坂から』の松崎海は、吉永小百合さんをモチーフにしたわけではありません。正確には作品の舞台になった『1963年』の雰囲気を、吉永さんが出演していた映画を観て参考にしたのです」(スタジオジブリ・広報部)
監督を務めた宮崎五朗さんは1967年生まれ、そのため作品づくりにあたって「設定」という大きな壁にぶつかったのだそう。
その時、プロデューサーでもあった鈴木敏夫さんが、1960年代に吉永さんが出演していた映画「キューポラのある街」など数作品を「参考に」と紹介したのが始まりでした。
1960年前半、吉永さんは東宝、松竹と並ぶ映画製作会社「日活」の看板女優として活躍。
純愛、ジュブナイル作品に多数出演し、当時の若者の間に「サユリスト」と呼ばれた一大ブームを巻き起こしました。
その作品に触れた宮崎さんは、吉永さんに「屈託」と「前向きさ」を感じ取ったのだそう。
吉永さんが演じる主人公には屈託というものがないかというと、どちらかというとある。いろんな悩みを抱えているんだけど、それを上回る生き生きとした感じがある。
と、2012年5月に発行された読売新聞の夕刊に、感じ取ったイメージを寄稿しています。
1963年、「東京オリンピック」が開催される前年は、高度経済成長期。
戦争で全てを失った時代から新しい時代へと、人々が前を向いていた時代でした。
「前向きな気持ち」を、自分の映画で表現したかった宮崎さん。
「コクリコ坂から」には、宮崎さんが感じ取った吉永さんの「屈託」だけではなく、当時を生きた人々の前向きさも詰め込まれているのです。
【関連】ドラマ『MIU404』好調の秘訣は、星野源&綾野剛がみせる新たな魅力に関係が?
長澤まさみは吉永小百合の後継者か?その抜擢理由について
「コクリコ坂から」は吉永さんだけではなく、吉永さんが出演していた1960年代の映画が影響していました。
では、「コクリコ坂から」で松崎海の声を担当した女優・長澤まさみさんにも、宮崎さんは「屈託」、そして「前向きさ」を見出したのでしょうか。
「長澤まさみさんを選んだ理由に、吉永小百合さんは関係ありません」(スタジオジブリ・広報部)
上記の通りスタジオジブリの返答では、長澤さんを声優に抜擢したわけに吉永さんは無関係なのだそう。
2010年に放送された三谷幸喜さんの作品「わが家の歴史」で、長澤さんの演技を見た鈴木敏夫さんの目に留まり、そして宮崎五朗さんが「勘」で長澤さんを松崎海の声に決定した、というのが長澤さんが抜擢された経緯。
しかし、「コクリコ坂から」が上映されていた2011年、当時映画を観た人たちの感想を見てみると、「吉永小百合さんの面影を感じた」という多数の書き込みが。
長澤さんは芸能界では交友関係が広いことでも有名。
先日出演したトーク番組では高校の友人に、共演したお笑い芸人など異色のメンツでリモート飲み会を決行したことで、その行動力に注目が集まっていました。
また、年齢が一回りも下の後輩に人間関係の相談を持ち掛けるなど、誰とでも分け隔てなく接することのできる人柄。
一方で、出演する映像作品では影のあるキャラクターも演じることができ、まさに吉永さんと同じような「屈託」と「前向きさ」を持っているのです。
長澤さんの選抜理由に吉永さんは関係「ありません」。
しかし2人の内面の共通点から、製作に携わったスタッフの中には自ずとこれらを見出していた可能性も考えられます。
映画「コクリコ坂から」、長澤さんの声から吉永小百合さんの面影を感じるのも。また一つの楽しみ方かもしれません。
(文:有馬翔平)